ハラとローレンス

★ハラは典型的なステレオタイプの日本兵である。
お国のために命を捧げるのは当然であり、敵の捕虜となるくらいなら自決するべきだ、という考えである。
その彼が奇妙な友情関係を築くのが、ローレンスだ。

ローレンスは日本に滞在したこともある、日本語が堪能なイギリス軍の中佐。
収容所では日本兵と捕虜の間を取り持つ通訳の役割も果たしている。
推測だが、2人はカネモトの捕虜淫行事件の処理以前から一緒に行動することがあったのかもしれない。

★ハラはローレンスが日本語と日本文化を解していることに非常に満足している。(欧米人へのコンプレックスもこの裏にはあると思う。)
また、何かとローレンスを頼りにしているのである。
ローレンスがカネモトに犯されたデ・ヨンを本部で預かって欲しいとハラにお願いしに来たとき、ハラは「日本兵は敵に助けなど求めたりしない」と一笑に伏す。
しかし、実際はどちらかというとハラの方がローレンスを頼っている節がある。
カネモトの事件を裁くために立会人としてローレンスを呼んだり、夜中にローレンスを起こして一緒にセリアズを見に行ったりする。
何かとハラがローレンスを自らの共犯者にしようとしている点には、一種の友情や親近感が根底にあると思う。

そして、ハラがローレンスに「お前が自決したら、もっとお前のことが好きになるのに」と言う通り、彼は確かにローレンスに親しみを感じているのである。
イギリス人は全員敵だとしても、ローレンスだけは彼の友人たり得るのである。
不思議なことに、まるで「戦友」のように見えるのが2人の関係なのだ。(ただしローレンスの方はハラのことを怖がりながらも付き合い、理解を深めようとしている感じ。)

★ハラとローレンスの二人にも、葛藤がある。
二人とも日本軍と捕虜という立場がありながら、互いに友情を感じているための葛藤である。
特にローレンスは日本語を話し日本文化や伝統、武士道といったものも理解を示している。
だからこそ立場だけでなく文化の相互理解という点においてもほかの捕虜(特にヒックスリ捕虜長)たちと一線を画し、その狭間で苦しむのである。(ヒックスリ捕虜長から「このジャップびいきめ!」と罵られることもあった。)

★ハラとローレンスの収容所での別れは、ハラがハルク島飛行場建設の指揮者として捕虜の半数を伴って出発したときだ。
ハラは行進する捕虜たちとともに収容所を去っていく。
その様子を息を飲むように見つめているローレンス。
2人の別れである。

2人の友情は薄く張った氷のようなものだったかもしれない。
しかし、心の奥底で互いのことを思ったことは間違いない。
この後4年の時を経て立場が逆転した状態で彼らは再会する。

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