セリアズ→ヨノイへの親愛の情

セリアズからヨノイへの感情は映画を一見しただけではわかりにくいものがある。
が、よくよく彼の言動を見るとともに原作でのセリエと重ねて見ると、やはりセリアズの方もまたヨノイに同じような親愛の情を感じていることがわかる。
また、原作ではヨノイはセリエのことを「自分と一心同体のように」思っていると描かれていて、セリエもヨノイのことを「あの男もぼくと同じ」と語っている。

以下、セリアズのヨノイに対する親愛の情が描かれたシーンである。

★絨毯にキス
ヨノイは独房に入れられていたセリアズに絨毯を差し入れている。
ヤジマ一等兵がセリアズを闇討ちにしようとしたとき、セリアズの寝ていた絨毯に短剣が刺さり、それがセリアズを命拾いさせてくれた。
セリアズはヤジマに一撃を食らわせて逃げる際、絨毯にキスをして持ち出す。
この行為にセリアズのヨノイに対する感謝の念が見てとれる。

余談。
この後彼は短剣と絨毯を抱いたまま、木に縛られているローレンスを助けに行き、「ここから脱出しよう」と言い、敷地内でヨノイに鉢合わせ、対峙することになる。
その時「絨毯を取り返しにきたな」と言って絨毯をヨノイの足元へ放るシーンがあるが、ふと疑問に思う。
鉢合わせなければ、彼はこの絨毯をどうする気だったのだろうか?
短剣は彼らにとっての大きな武器であるからわかるが、絨毯を持って逃げるつもりだとは到底思えない。
逃げる前にヨノイに返しに行くわけではないだろうし。
まさかヨノイとの思い出の品にして持ち出すつもりだったのだろうか。
……どう想像してもわからなかったので、これは演出上都合がよいため、と考えることにする。

★ローレンスと日本兵に両者の気持ちがバレても何も言えない
ヨノイがハラの拳銃からセリアズを庇って立ち塞がったとき、ローレンスはセリアズに「彼に好かれているようだな」と茶化すように言う。
その時セリアズは顔を伏せて何も言えない。
彼もまたそのことを知っているし、自分もまたヨノイのことを嫌いではないから何も言えなかったと思われる。

★ヨノイから目をそらして「美しい」とつぶやく
全員集合させられた時、ヨノイがキリッと立つ姿を見たセリアズはパッと目をそらし、気を紛らわすかのように「It is beautiful. (美しい)」と言っている。
それを聞いたローレンスは周りの景色や空をチラリと見て微笑むが、セリアズはヨノイを見て「美しい」という言葉が出たのではないか、と推測する。

「セリアズ→ヨノイへの親愛の情」への4件のフィードバック

  1. Twitterでフォローさせて頂いております。コメント欄があることに本日気が付きましたので、コメントさせていただきますね。
    「美しい」とセリアズが呟くシーン、ただ風景のことを言っているのだとばかりと思っていたのでこの解釈がとても新鮮でした。
    たしかに、セリアズと対峙する場面、俘虜たちを突き放す場面など後半になるにつれヨノイの人外的な美しさに磨きがかかっているような気がします。
    セリアズがヨノイに対して美しいと言ったのだとすると、その後のキス事件の解釈もまた増えて面白いですね。

    まだすべて読んでいる訳では無いので、これからもちょこちょこコメントすると思います。資料も多く文章もわかりやすい、本当に素敵なサイトですね。豆知識もサンストの文字起こしもありがたいです。更新待っています。

    1. ミネ様
      ご訪問とコメントありがとうございます!Twitterではお世話になっています!
      実は、このサイトを昨年作った時も見る人なんて居るかしらと思っていたのですが、Twitterにあんなにたくさんの戦メリファンの方がいることを知って、すごく嬉しかったです。私も17年前、今のミネさんたちと同じ歳の頃(歳がバレる・・・笑)戦メリを観て衝撃が走り、この作品は深いところで何を語っているのだろうとのめり込みました。(同時に教授、YMOにも走り、音楽嗜好はずっとYMOで止まってます。笑)
      年に一度は観て来ましたが、観るたびに描かれていないところを読もうとしてしまいますし、セリフやシーンに新たな解釈を発見してしまいます。
      なので、「美しい」のシーンはここ2、3年で気づいた解釈なのですが、もちろん本当は違うかもしれませんし、バッチリ大島監督の意図に合致するかもしれませんし、正解はわかりません(笑)
      でも、どんな解釈でもこの作品は素晴らしいものに変わりないので、私たちを飽きさせないのかもしれないですね!
      私のメモをまとめただけなので、今後はもっと見やすくしたいと思っています(汗)
      今後とも宜しくお願いします!!^^

  2. わぁ( ;∀;) こんな素敵なサイトがあるなんて(涙腺崩壊中)。
    久々に「戦場のメリークリスマス」を鑑賞していました。ここにコメントを残して良いものかと悩みましたが(また、文章も稚拙なので気おくれしますが)、これも何かのご縁かと、思い切ってコメント残させていただきます。
    原作を読んでいないので素っ頓狂な感想かもしれませんが、セリアズが事切れる際に自宅の(?)庭先で弟と会うシーンがありますよね? 「5年後に戻ってくる」と言うセリアズに対し、弟は「何も言わないで…」と答え、その後、5年に1度しか咲かない花の話をしたあとに、「家に入ろう」と弟はセリアズの手をひいて家に入っていきます。
    このシーンは、あの世に半分行きかけている最中なのかなと思って観ているのですが、弟の誘いを断って家に入らなければ、セリアズは5年生き延びることになったのかしら…と、いつも気になります^^;
    「5年」の経過は、その後、日本が敗戦国となり、ハラ軍曹が処刑されるころに被りますよね。
    ここのシーンで出てくる「5年」のキーワードがひっかかっているのですが、何か考察がございましたら参考までにお教えいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

    1. さくら様
      ご訪問、コメントありがとうございます!
      セリアズが亡くなる直前のあの庭での弟との再会のシーンですね。
      あのシーンは弟に謝罪したかったセリアズが夢に見ているシーンでしょうね。
      これは「次に(5年後に)花が再び咲く前に、僕は戻るよ、約束する」と言っているので、脳裏に思い描いている幻の再会シーンだと思います。戦争に発つ前に言いたかったのに言えなかったことを脳裏に描いていたのではないでしょうか。(セリアズの軍服も綺麗ですし、弟は幼い姿のまま)

      さて、問題の「5年」のキーワードですが、ごめんなさい、私には「戦争に行ってからきっと5年の間に戻る」と元々セリアズが考えていたのだろうと考えていただけでした^^;
      確かに5年の間に戦争は終わり、セリアズは亡くなる直前に弟のことを思い、その気持ちだけが故郷に帰って行ったのだと思います。実際にはセリアズは戦争勃発と共に入隊したので1941年12月に弟と別れ、その翌年1942年のクリスマスに亡くなりましたので、たったの1年のうちに弟との別れから自らの死に至ったのですね……。
      この時家に入らなかったら5年生き延びていたかどうかは、わかりません(笑)
      映像では家に入ったのかどうか不鮮明ですね。庭先の花に消えてしまう兄弟の姿。もしかしたら夢で弟と会えたのはすでに死の入り口をくぐったから、だったのかもしれません。

      あと、ハラ軍曹が処刑されるのが1946年。映画の中でも「4 YEARS LATER(4年後)」と字幕が出ますので、セリアズの弟の「5年」とはまた直接的な関連性はなかったのではないかと思いますが、どうでしょう^^

      私が気づかなかった箇所でまたこうして考察させてもらえることに感謝です。
      ありがとうございます。またご訪問くださいませ!

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